本文へスキップ

Je me souviens

〒663-8247 西宮市津門稲荷町1-28-2F端

育成指針guide line

留守家庭児童育成センター 育成指針
平成14年4月1日
社会福祉法人 西宮市社会福祉協議会

この指針は、西宮市立留守家庭育成センター(以下「育成センター」という。)条例施行規則第2条に規定される事業内容に基づき、各育成センターにおいて子どもの育成上留意すべき必要な事項を定め、もって子どもの健全な育成を図ることを目的とする。

1.基本的な視点

「育成センター」は、保護者の就労等により昼間家庭において適切な育成を受けられない子どもの集団で継続して生活する場である。
「子ども」は、一人ひとりの年齢・家庭・生活環境が違い、性格や体力・思いなどもさまざまである。
「指導員」は、その子どもたちの放課後の生活を見守り、適切な遊びなどをとおして成長・発達を援助することを職務とする。

2.子どもの健康管理と安全の確保

(1)健康管理
指導員は、目ざましく成長・発育する子どもの健康状態を常に把握し、室温の調整などについて適切に対応する必要がある。
発熱など体調に異常を生じた時は適宜保護者への連絡を行うとともに応急の処置をとり、場合によっては医療機関への受診も考慮しなければならない。
また、日常の手洗いやうがいの励行についての指導を行うとともに、食中毒が発生しやすい季節には食品の衛生管理について特に注意が必要となる。
指導員は、子ども自らが健康に関心を持ち、自分で衣服の調整をしたり体調が悪いときには指導員に訴えるなど、健康を管理する力が養われるように指導することも大切である。

(2)安全確保
安全を確保するための基本として、指導員は常に施設・設備の状態や備品・遊具等の点検を行い、子どもが安全に過ごせる環境づくりに努めることが大事である。
万が一、事故(ケガ)が起きた場合には適切な応急処置を講じ、必要に応じて医療機関に受診するなどの対応をとるとともに、保護者にはできる限り正確な状況を伝えなければならない。
また、平素より受入れ医療機関等への連絡体制も整えておく必要がある。
指導員は、開所中の子どもの所在をたえず確認し、無断欠席や緊急時には保護者との連絡がとれる体制をつくっておく必要がある。
また、災害・災難をも想定して帰路における危険箇所などの把握につとめ、場合によっては学校や関係機関との連携を図り具体的な対応をとることも必要である。
あわせて、子どもにも日頃から危険に近づかない、危険を回避する知恵も身につくように指導・援助することが大切である。

3.子ども一人ひとりと集団を生かした生活づくり

育成センターでの生活づくりの基本は、子ども一人ひとりを大切にしながら集団での安定した生活を維持することにあり、指導員はこの年齢にふさわしい基本的な生活を子どもとともにつくりあげていくことが大事である。
そのためには、子ども一人ひとりの発達の過程をつかみ、見通しを持ってその子の成長を促す働きかけが必要となる。
そして、子どもがお互いの存在や関わりをとおして成長しあえるような異年齢のよさを生かした生活づくりに努めなければならない。

(1)情緒の安定を図る
指導員は、子ども一人ひとりが何を感じ何を思っているのかを理解し、共感や励まし、そして時には物事の善悪や是非などについて考えさせるなどていねいに関わるようにしなければならない。
同時に、子どもどうしが互いに認めあい、受け入れあい、助けあえる関係をつくれるように援助することも大切である。
このような働きかけをとおして信頼関係を築きながら子どもが安心してくつろぎ、仲間の中で自分らしさを出せる居場所をつくることにより子どもの情緒の安定が図られていく。

(2)自主性・社会性・創造性を培う
指導員は、異年齢の集団が持つ「互いに働きかける機能」が最大に生かされるように努めなければならない。
遊びを中心とした取組みやグループ活動等において、子どもたちそれぞれの役割をつくり、あわせて社会性や創造性も育つように働きかけることが大切である。

(3)障害のある子どもへの配慮
障害のある子どもを受け入れるにあたり、指導員は保護者をはじめ関係者と十分な連携を取りあい、その子どもの障害がどのようなものであるかを理解し、どういう生活上の配慮が必要かを確認しておかなければならない。
また、障害のある子どもも含めてみんなが育成センターで一緒に生活するなかで、共に学び、育ちあい、楽しさを共有できるような接点を少しでも多くつくる必要がある。
障害のある子どもが入所している育成センターで指導員が定例的に行なう「処遇会議」では、その子どもの発達過程や今後の課題などについて考え、必要であれば専門機関のアドバイスを受けたり保護者の意見も聞きながら「他の子どもたちとの関わり」や「育成センターでの生活のあり方」などについて幅広く検討するべきである。

4.育成センターでの生活・活動

指導員は、子どもの生活の様子や実態に則して月間及び年間の保育計画の作成をはじめ一日の保育の流れを柔軟に組立てながら、豊富な活動内容によって子ども一人ひとりの毎日の継続した生活がより広がり、深まるように努めなければならない。

(1)基本的な生活習慣
指導員は子どもの基本的な生活習慣が身につくように、日常のあいさつだけでなく自分の持ち物は自分で管理し身の回りのことは自分でできるという身辺の自立に向けた指導を行なわなければならない。
また、共同生活をするうえで必要とされる約束やルールを守り、掃除や準備・後片付けなどの仕事や役割を分担することで、社会生活に必要な知恵と力が育つように援助することも大切である。

(2)あそび
育成センターの生活で最も中心的な活動は遊びである。
遊びは自由で自発的であることがその本質であり、子どもにとって大切な文化であり、最大の自己表現でもある。
指導員はまず、子どもの自由ば意思や自発的な遊びの世界を十分に確保できるように配慮することが必要である。
また、子どもが興味や関心を持ち、その五感を働かせ、充分に手洗や身体全体を使うような豊かな遊びや活動(工作・飼育栽培・観賞・製作・表現活動等)を積極的に提示し、遊びの中で生じるいろいろな問題を子どもと一緒に考え、遊びを発展させることにより子どもどうしの関わりを深め、活き活きとした放課後生活が過ごせるように努めなければならない。
また、指導員は子ども一人ひとりの状況の把握に努め、遊びを見つけられない、遊びに入れない、遊びが続かない等の子どもに対しては意図的に援助していくことが必要となる。

1)自由遊び
「自由遊び」は、育成センターの一日の流れの中で自由時間に展開される子どもの自主的・自発的な遊びをいう。
その日の気分や雰囲気で型にとらわれずさまざまな遊びの面白さを経験し、自分で遊びを見つけ、遊ぶ仲間を見つけ、遊びきる力が育つ場である。
2)全体遊び
「全体遊び」は、子どもの興味や関心に基づきある時間帯をみんなで一緒に同じ遊びをすることをいう。
その中で、知恵を出しあいながらみんなで遊べるためのルールをつくったり、時にはけんかをしたりぶつかりあったりしながらもその違いを認めあうなど、仲間との空間や時間を共有することにより人間関係をより豊かにする場である。
3)取り組み
遊びや活動を発展させ、その目標をより明確にし、一定期間みんなで集中して行なうものを「取り組み」と呼び、例としてコマやケン玉検定、工作・製作活動、ドッチボール大会に向けた取り組みなどがある。
子ども一人ひとりが自分で目標を設定し、その目標に向けた取り組みの中で挑戦し、集中力や緊張感を味わい、競いあい認めあうことでいろいろ学ぶとともに、やりとげた充実感や満足感・達成感も味わえる場としたい。
指導員は、”できた”か”できなかった”かの二元論的評価で子どもがやる気や自信を喪失することのないように、目標の設定の仕方に十分に留意しなければならない。
そして、どこまで達成したかよりどのように達成したかというその過程に注意することにより、子どもが自分に自信を持ち、やればできるという力を育むように働きかけることが大切である。

(3)行事
育成センターでは年間計画に基づき様々な行事が行なわれている。
入所・卒所式や誕生会などの生活の節目や子どもの成長を祝うために行うもの、七夕・ひな祭りなど四季折々の行事にならったもの、人形劇や映画等の観賞会、育成センターで取り組んだことの発表の場など様々なものがある。
指導員は、これらの行事を実施するにあたってはその目的や性格を明らかにし、子ども主体に無理のない計画をたてるとともに学校や地域行事との兼ねあい等についても十分に配慮する必要がある。

(4)おやつ
おやつは発達・成長盛りの子どもにとって大きな楽しみのひとつであり、また、補食としての役割も果たしている。
そして、おやつの時間はみんなで集うひとときであり、準備や片付けをしたり、時にはその時間を利用して連絡や話しあいを行うなど、一日の生活の流れからも大切な時間として位置づけられる。
そのため指導員は、時間設定をはじめ場作り、雰囲気作りから子どもの体調や栄養面にも配慮し、衛生面にも十分留意しなければならない。

(5)学習
子どもにとって、育成センターでの数々の生活体験そのものが大切な学びの機会である。
指導員は子どもが学校などで学んだ知識を育成センターの実際の生活や活動に生かし、知的な興味や関心・探求心などを育て伸ばすように援助していく必要がある。
読書や自習・宿題といった学習活動は育成センターの主とする役割ではないが、子どもが進んで学習をする習慣が身につくようにできるだけ落ち着ける場や時間を設定するなどの配慮を行う必要がある。
なお、宿題についてはその内容だけでなく子どもの下校時間や保護者の考え方もさまざまで統一した対応を取ることは難しく、育成センターでどこまで関われるかについて保護者とよく話しあっていく必要がある。

(6)園外保育
遠足をはじめ映画会や人形劇・博物館の見学または夏のプールや川遊びなどと外に出かける園外保育は、日常生活に変化を持たせ、普段の生活では体験できない新しい発見や喜びなどを生み、子どもの生活をより豊かにする活動である。
このように自然に親しみ、体力をつけ、視野を広げるとともに公共のマナーや社会的なルールも学ぶなどいろいろな効果が期待される。
実施にあたって指導員は、費用や日程・回数などを考慮し、子どもの希望も聞きながら園外保育の目的や意義・内容などについて十分検討して計画することが重要であり、子どもに対しては事前に注意点などをよく説明しておくことが大切である。
とりわけ、子どもの安全には留意し、交通機関やトイレ、休憩場所および緊急時の対応などの確認を十分にとっておく必要がある。

5.家庭との関わり

子どもが健康で安全な生活をおくるためには保護者との連携は不可欠である。
指導員は保護者に対して子どもの育成センターでの生活内容や必要な事柄をさまざまな方法(電話連絡や面談なども含む)で伝え、保護者からも家庭での様子などを知らせてもらうことが大切である。
そして、働きながら子育てをしている親の立場を理解し、親の思いを少しでも受けとめながら信頼関係を築きあげることが重要である。
なお、子どもたちの様子を保護者に伝える場合に、誤解を招くような表現やプライバシーの問題には十分留意しなければならない。
1)保護者会
保護者会は、運営委員や指導員と保護者が育成センターでの子どもの生活はもとより子育てなどについて直接話しあい意見交換ができる大切な場である。
指導員は、保護者会において保育計画の説明や育成センターでの子どもの様子を報告するとともに、自分たちが育成センターの生活で大切にしていることや課題などを伝えることも重要である。
また、保護者の意見や感想を積極的に受けとめようとする姿勢を持つとともに、できるだけ共通の課題について話しあい、保護者同士の交流も深まるように努めることが大切である。
2)連絡帳
連絡帳は、主として子どもの出欠・早退の連絡や健康状態などを伝えるために用いられるが、保護者と個別に情報や意見の交換も可能なものであり、保護者と指導員をつなぐパイプ役ともなる。
保護者からの大切な連絡は見落とすことのないように注意し、その返事は保育時間中であるためできるだけ要領よく簡潔に記入するなどの工夫が必要となる。
3)育成センターだより
通常、毎月発行する「育成センターだより」(通信)は、保護者全体に行事のお知らせや事務連絡を行うとともに、子どもたちの生活の様子や指導員の子どもへの関わり方などを伝える手段として最も有効なものであり、その特性を十分に生かした紙面作りが求められる。
「育成センターだより」により、毎日の生活のなかで思わず笑ったり、感動したり、たくましく成長していく子どもの姿を具体的な事実に基づいて伝えることで保護者とその事実を共有し、結果として育成センターへの理解を深め信頼関係を築いていくことになる。
4)塾、おけいこごと
子どもは、限られた放課後の時間を育成センターの中で継続した活動や生活を送っている。
塾やけいこごとによりその集団生活が中断されるということは、子どもだけでなく指導員にとっても全体的な生活リズムを維持するうえであまり好ましいものとはいえない。
指導員は、このような状況を保護者に伝え、理解と協力を得ながらできるかぎり育成センターでの子どもの生活に支障がでないように工夫をしていく必要がある。

6.学校・地域等との連携

(1)学校との連携
育成センターの日々の生活・活動にとって、下校時間の変更や給食の有無及び振替休業日などはもとより気象警報の発令やインフルエンザによる学級閉鎖時の対応など、学校との連絡連携は絶対に欠かせないものである。
また、学校生活と調和のとれた保育計画を作成するうえからも学校行事を常に把握しておく必要がある。
とくに、学校から育成センターに直接帰ってくる子どもの様子を様々な機会をとらえて学校側からよく聞き、また、育成センターでの様子も学校側に積極的に伝えることにより、子どもについての相互理解を図ることがとても大切である。
そのために、指導員は学校関係者(校長や教頭、学級担任および養護教諭等)とはいつでも連絡をとり相談しあえるような関係をつくることが非常に重要である。

(2)地域等との関わり
育成センターは運営委員会を通じて地域の理解や協力が得られやすい環境にあるといえるが、さらに指導員は「おたより」等を通じて育成センターの行事や子どもの様子を地域の代表でもある運営委員等に十分伝えるとともに、地域行事に参加するなど地域とのより良い連携を図ることが大切である。
また、指導員は子どもが生活している地域環境をよく理解し、児童館や公民館をはじめ自然環境や社会資源の特性を育成センターの活動に生かしていくことが望まれる。

「留守家庭児童育成センター育成指針」のまとめにあたって

留守家庭児童育成センター育成指針作成検討会
会長 久保 等

社会福祉法人西宮市社会福祉協議会(西宮市社協)における「留守家庭児童育成センター育成指針」を作成するため検討委員会が設置され、運営委員長、育成センターの指導員、西宮市児童育成課ならびに西宮市社協学童育成課(平成13年度からは学童・施設事業課)の10名の委員により、21回におよぶ検討会を開催し、慎重に審議を重ねてまいりました。
そして、ここに「育成指針」をまとめ、西宮市社協に答申する運びとなりましたことに、心から安堵いたしております。
西宮市社協におかれましては、この答申に沿って「育成指針」として決定され、有意義に活用されますことを期待するとともに、育成センターの事業がさらに発展することを願いながら、審議経過等を踏まえて所感(感じたこと)を述べさせていただきます。

1.検討会での審議にあたっては、指導員をはじめ委員それぞれの意見を充分に尊重しながらすすめてきました。
時には考えや思い、そして意見の違いもありましたが、議論を尽くして皆の合意を得るように努めたところです。
指導員の皆様には、今後、指針にもとづいて、育成センターの児童が安心してのびのびとした放課後生活が過ごせるよう、お互いに切磋琢磨していただき、育成センターの事業内容がより発展されることを期待いたします。

2.西宮市社協では、[地域の子どもを地域で育てる]という目的を実践するため、育成センターごとに運営委員会が設置されています。
運営委員長をはじめ、児童関係機関・団体等から選出されている委員の皆様には、「児童の育成」をとおして、より一層の連帯を強めていただくとともに、育成センターが児童の健全育成を図る拠点の一つとして、より深く地域社会に浸透し、育成センターが果たしている重要な役割が地域の皆様に認識されるように、地域の関係団体等に理解・協力を得る努力をお願いいたいと思います。

3.西宮市社協の福祉目標は、住民主体の理念に基づき、地域の福祉課題の解決に取り組むことにより、「市民一人ひとりが安心して暮らせる福祉のまちをみんなでつくる」ことにあります。
この目標に照らした場合、運営委員会が活動するということは、とりも直さず地域社会が運営に関わるということであり、又、児童福祉に関する地域力を育むことにもつながります。
西宮市社協には、これを機に、より一層の地域福祉の前進が図られるよう期待したいと思います。
なお、検討会の審議過程で、市当局に対して「行政として果たす役割を明確にしてほしい」という意見がありました。
子育て支援の充実が求められる今日、公的施策である育成センターの発展充実に向けて、市当局は一層の努力を期待します。

inserted by FC2 system